平成24年5月 第3回龍馬塾「詩吟入門」

平成24年5月 第3回龍馬塾「詩吟入門」

 

5月15日(火)午後6時30分〜8時、北海道坂本龍馬記念館ホールにて第3回龍馬塾「詩吟入門」が開催されました。今回は学生、会社員、主婦、正会員など12名の方々が受講されました。 
講師を担当してくださった湊賢心(みなと・けんしん)氏は、昭和14年函館生まれ、函館育ちで、詩吟歴は何と50年という超ベテラン。現在は水月流賢心朗吟会宗家・会長のほか、日本コロムビア吟詠音楽会会員、日本吟詠総連盟北海道地区常任理事、函館市文化団体協議会理事などを務めておられます。また、函館野外劇での吟詠や函館開港150周年記念特設ステージへのご出演、ビクター吟友会全国吟詠コンクール決勝大会での入賞。そして、コンクール用課題吟の収録、企画構成吟の作成など、幅広く活躍されております。
第3回龍馬塾は、湊氏制作による資料に沿って、解説と吟詠(詩吟の実演)を織り交ぜながら進められました。



 

■詩吟について
そもそも詩吟とは漢詩に節をつけて詠うことですが、現在では俳句や和歌、新体詩(明治初期に西洋の詩歌の形式と精神とを採り入れて創始された新しい詩型)の朗詠や、琵琶歌(琵琶を伴奏とする歌)と併せた企画構成吟の発表なども多くなってきています。
なお、漢詩とは中国で生まれた詩のことで、日本でいう和歌や俳句に相当し、大化の改新前後(645年頃)に渡来したといわれています。ここで、陶渕明(とう・えんめい)作による漢詩『勧学歌』(かんがくのうた)の吟詠を湊氏の門下生である濱谷内節子さんが披露してくださいました。


盛年不重来 せいねん かさねて きたらず (人生の盛りの年は一生のうち二度と来ない)
一日難再晨 いちじつ ふたたび あした なりがたし (一日に朝が二度とやって来ないのと同じことだ)
及時当勉励 ときにおよんで まさにべんれい すべし (だから今という時にこそ勉学しなければいけない)
歳月不待人 さいげつ ひとを またず (歳月は人を待たず、さっさと流れ過ぎてしまうものである)


吟詠にはカセットテープやコンダクターと呼ばれる機材が伴奏に使用され、臨場感が醸し出されると共に、詠われている内容が深く心に響いてきました。


■漢詩の吟じ方
 続いて、詩吟の吟じ方が解説されました。平安朝から幕末頃までは、単に音読をしたか、抑揚をつけて朗々と読み上げたと思われます。現在のような独特の節調が生まれたのは、幕末に九州の漢学者・広瀬淡窓(ひろせ・たんそう/江戸後期の儒学者)が漢詩の教育に役立てるために普及させたという説や、徳川五代将軍・綱吉が湯島に昌平坂学問所(東京大学の前身)を開設し、漢詩の講義で学生たちの興味を引くために節をつけて読み聞かせたのが始まりという説などがあります。




四行詩(絶句)の場合、それぞれの行が「起・承・転・結」を表します。第一句(起句)は前触れ、 第二句(承句)はそれを受けて流し、第三句(転句)は一転して本題の眼目を言い、第四句(結句)は本題を補足したり説明をして終わります。起句と承句、転句と結句でそれぞれ一つのことを語ります。  詩を吟じるにあたっては、まず詩文をよく読み、内容や作者の心情を理解します。そして、その詩の持っている意味や感じを多くの人に心地よく、ハッとする感動を与えられるよう心を込めて吟じることが大切で、読み方としては一字一字を抑えるように言葉の“間”を大切にし、かつ明瞭な発声を心掛けることが重要とのことでした。 詩吟においては美声であるかどうかは問題ではなく、本人の地声に標準を合わせますが、詩吟も芸の一つであり、節の流暢さ、余韻、緩急などの技巧が求められます。そして最も大切なことは、他の伝統文化と同様、“礼節を重んじる心”ということでした。


■発声について
 吟詠においては、人に感動を与えるためにあらゆる技術の習得と鍛錬が必要となります。まず大切なことは自分の声を知ることであり、そのためには録音して実際に聞いてみるのが良いとのことです。
 声は次の4つの要素で構成されています。
@声の高低(ピッチ)→声帯の長さによって決まります。男性の声帯は長く(音程が低い)、女性や子供の声帯は短く(音程が高く)なります。
A声の強弱→声の強弱はその人の健康状態と関係があり、健康な人の声は明るく大きいですが、病気の人や高齢者は一般的に小さいと言われます。詩吟は強い声を長く伸ばす腹式呼吸により、腹筋、背筋、腰筋を強くするため健康面にも効用があり、精神的にもストレス解消に効用があるといわれています。
B声の音色・音質→同じ音程でも楽器によって音が全く違うように、声にも個人差があります。
C声の継続→詩吟は一息で長い節を吟じるため、吐く息をどのくらい長く続けられるかが重要となり ます。
そのほか、良い声や発声のための心がけとして、楽な姿勢、柔和な表情で吟じることや、5つの母音「あ・い・う・え・お」を美しく発声することなどが大切で、これを美しく発声できれば基本をマスターしたことになるそうです。

■吟詠(詩吟の実演)
 後半は、漢詩、俳句、和歌など、数編の吟詠が披露されました。
○俳句 古池や 松尾芭蕉  古池や 蛙飛び込む 水の音
○和歌 世の人は 坂本龍馬 世の人は、われを何ともいはばいへ わがなすことは われのみぞ知る  
○和歌 優しさの 湊賢心   優しさの 人の心に 触れしとき 生きるよろこび しみじみとわく 

■発声体験
 最後に、湊氏の指導に沿って参加者全員で詩吟の発声練習を行いました。発声は母音(あ・い・う・え・お)それぞれの音で行い、皆さん大変気持ち良さそうに大きな声を出して体験していました。



■最後に
 今回受講された方からは、「とても楽しく参加でき、今まで持っていた詩吟のイメージが変わりました」、あるいは「先生の良い声が聴けて気分が良く、参加してよかった」といった感想が聞かれました。 ぜひ幕末の志士たちの漢詩や和歌を取り上げてほしいといったリクエストも出されましたので、次の機会のテーマとして実現したいと思います。



《第4回龍馬塾》 6/15(金) 午後6時30分〜8時
「幕末の蝦夷地と北方領土」 講師:加藤潔氏(前函館市立青柳小学校校長)
江戸時代から続く北方領土問題や、龍馬が目指した蝦夷地(北海道)の古今をわかりやすく解説します。



《第5回龍馬塾》 7/15(日) 午後6時30分〜8時
「書道」講師:上山天遂氏(読売書法会理事・北朋印社代表)
蝦夷地開拓を目指した龍馬の手紙文を手本に、あなたの志や目標を巻き手紙に書き上げます。(※書道用具は不要です)
●対 象:どなたでも受講できます(要予約)
●定 員:20名(定員になり次第締切り)
●協力金:500円(1回につき/資料代含む/正会員無料)
●会 場:北海道坂本龍馬記念館ホール(十字街電停前)
●申込み:北海道坂本龍馬記念館
TEL 0138-24-1115/FAX 0138-24-1116/E-mail ryoma1115@amail.plala.or.jp