ヨーロッパ人から見た日本観
『一度も植民地になったことがない日本』(デュラン・れい子著、講談社+α新書)、この本は2年程前に発行されて話題になった本です。
とてもインパクトのあるタイトルに思えますが、わかっている人には至極当然のことのように思えるでしょう。しかしその一方で、形式的には一度も植民地になっていないとはいえ、その実情は某国の植民地化しているとみる向きが多いのも事実です。
この本の著者は東京生まれの日本人女性で、スウェーデン人と結婚後、主にヨーロッパ各地で生活され、客観的な視点で日本人について書いておられます。日本人がヨーロッパの人々の目にどのように映っているのかを客観的に知ることができます。
印象に残った部分を抜粋してみます。
■「安土桃山時代、はるばる日本に来航したスペインやポルトガルのバテレン(宣教師)たちのことは、よく知られている。彼らはヨーロッパの珍しいものを多数持参し、織田信長などの興味を引いたが、彼らの真の目的はキリスト教布教とともに母国の領土を拡大することだった。つまり彼らは我が日本をもフィリピンやマカオ同様、植民地にしようとしていたのだ。このことに興味を示す日本人が少ないのはなぜだろう。だから信長に続く日本の為政者たちがキリスト教を恐れたのは正しい判断だったと思う」
■「(著者の夫) “日本は運がいい。いや、運がいいのでなく頭がよかったのだろうな。だって織田信長のころ宣教師が来日したときや、徳川時代の終わりに西欧の国々が日本に開国をせまったときも、植民地になる危機があったわけだろ?” (著者)ハッとした。そういう考え方を日本の学校の歴史の時間に習った覚えがなかったからだ。たぶん、今の中学生、高校生も習っていないだろう。幕末の日本人の中で、アフリカや南米と同じように日本が植民地になるという恐怖を抱いた人が、はたしていたのだろうか」
幕末日本が植民地とならずにすんだのは、勝海舟や坂本龍馬をはじめとする志士たちの活躍があればこそと思います。彼らの真骨頂は、世界を見渡すその眼識だったのではないでしょうか?